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日本のヨガ史と
ヨガ事情−ヨガとヨーガ


ヨガとヨーガの違いは何?】

 (日本では、奈良時代以来、ヨガは「瑜伽(ゆが)」とよばれ、ラジヤ・ヨガ(冥想・瞑想)、ジユニャーナ・ヨガ(哲学)、マントラ・ヨガ(真言・陀羅尼)カルマ・ヨガ(日常生活の実践で、因果を超える)、バクティ・ヨガ(神仏への信仰三昧)などが、仏教や神道の実践修行や教理学の中心として伝わってきました。

 他力本願の大衆できえ、念仏・三昧という、ヨガの冥想(瞑想)の究極の実践を行じ、お不動様=不動明王=ヨガ行者の象徴=シヴァ神に、願をかけます。
 
 ほとんどの日本人は、知らず、気づかないことですが、ヨガの行法哲学は日本人の心性の深層部分をつくり出し、心の一部になっていると思います
【以上「ヨガと仏教」と重複】

ヨガの聖音(マントラ)=OM(オーム)の梵字。
ヨガの聖音(マントラ)=OM
(オーム)の梵字。仏教の「南
無(なむ)」は、この漢字表記。

『ヨガと冥想(瞑想)』 より


 さて、「ヨガ」という言葉を、大正時代から日本へ広めたのは、中村天風です。

 その遺志を継ぐ“天風会”は、1990年で、71年目になります。

 中村天風は、貴族の息子で、軍事探偵(スパイ)になり、世界各地で暗躍し“人斬り天風”とよばれました。

 エジプトで死病にかかり、ヨガの導師(グル)に出会い、ヒマラヤ山中へつれていかれ、修行を重ね、「病気や不幸は、自分の心が生み出すものだ」と悟り、心身統一道=ヨガを体得しました。

 日本へ帰り、丹田呼吸や積極的思考法のヨガの真髄を説き、東郷平八郎元帥や相撲の双葉山など各界の名士から、一般庶民にまではば広く「ヨガ」の心を語りました。

 弟子の宇野千代著『天風先生座談』が当時を伝えています。

 1950年代以降、「ヨガ」をブームにしたのは、沖正弘です。

 彼も軍事探偵の過去をもち、丹田呼吸、積極思考の心身統一道という天風の遺風を継いでいます。
 
 ハタ・ヨガを中心として、「沖ヨガ」と言われ、操体、整体、針灸、静座法、西式健康法、マクロバイオティック(自然食)、武道、呼吸法など、全体的(ホリスティック)な医学や、禅・冥想(瞑想)、強化法などを含む、総合的なヨガです。

 1970年代から、「ヨーガ」という言葉が、佐保田鶴治により、主張されるようになりました。
 
 大阪大学の名誉教授で、ヨガの文献を多数、訳している彼は「yoga」の発音は、ヨガでなく、ヨーガが「正しい」と語ります。

 インドでは「ヨ、ガ」と区切って発音するように、私は聞こえますが……。

 佐保田鶴治は60歳頃からハタ・ヨガを始め、80歳すぎまで「ヨーガ」をテレビや本で指導しました。

 そういうわけで、日本では、年配の方は「ヨガ」とよびます。

 長年、耳で開き慣れてきたからです。

 一方、本などの文献や、テレビ、教室などで「ヨーガ」を学んだ方は「ヨーガ」とよびます。

 小説家の野間宏は著書の「浮世絵草書」で、学んだ書名には「ヨーガ」を使い、自分の言葉である本文では「ヨガ」と使い分けています。

 両方の「ちがい」を認め、自分の立場を守る、誠実な態度でしょう。

 「師統=導師の系統」により、私は「ヨガ」という言葉を使います。

 感じる響きを大切にしたいという理由もあります。

 それで「ヨーガ」の文献に出ていた事実でも「ヨガ」と書き、「瑜伽」も「ヨガ」として統一しました。

 もちろん巻末の参考文献は、「ヨーガ根本教典】など、正確を期しました。
 
 言葉と、それに対する思い入れは強いので、単純な一元論で、どちらか一方を切り捨てる「統一」は、好ましくありません。

 「一」を説き、「合一」のためのyogaが、ヨガとヨーガに分裂しているという事実が、ちがいを認めたうえでのマンダラ的発想の必要性を象徴しているように、私は思います。 (文中敬称・略。合掌)

内藤景代著『ヨガと冥想(瞑想)』 実業之日本社刊より)

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